肝がんの90%以上は、肝炎ウイルスが原因です。その大部分が肝細胞がんです。最近のわが国での肝がんの増加はC型肝炎ウイルスに関係していることが明らかになっています。

わが国の肝がんの原因で、もっとも多いのがC型肝炎ウイルス、次にB型肝炎ウイルスの感染であることがわかっています。
   
   

肝臓にできるがんを肝がんと呼びます。肝臓の中の肝細胞ががんになる肝細胞がんや肝臓の中の胆管(胆汁が流れる管)ががんになる胆管細胞がんがあります。そのほかにも肝臓以外の臓器(例えば胃や腸)にできたがんが肝臓に散ってがんができる転移性肝がんがあります。日本では肝がんというとほとんどが肝細胞がんのことです。

   
   

小さな(腫瘍径2cm以下)結節型肝がんで発見することがもっとも大事(早期発見・早期治療)です。この目的が達成できれば、肝切除、エタノール注入治療、マイクロ波凝固療法、ラジオ波焼灼療法いずれでも6割は5年以上生存可能となりました。早期診断された小さな肝がんの治療法は、ここ10年でもっとも進歩した分野です。それぞれの治療法の利点と欠点を理解した専門医とよく相談して治療方針を決定することが大切です。

それでは、実際に行われている治療法を説明しましょう。
●ラジオ波焼灼療法(RFA)
ラジオ波(460kHz)により誘電加熱して熱焼灼(約80〜100度)する治療法で、焼灼範囲が広く一回の照射で径約3cmを完全壊死させることが出来る。また、肝予備能に負担が少ないが、肝臓に近接する他臓器(大きな血管や胃、腸管など)の損傷の可能性があります。超音波で見ながら肝臓内の腫瘍部分にラジオ波電極針を挿入して行います。
●マイクロ波凝固療法(PMCT)
マイクロ波(電子レンジと原理的には同じ)で腫瘍を凝固壊死させる治療法です。超音波で肝臓内部を見ながら肝臓内の腫瘍部分にマイクロ波電極針を挿入して行います。凝固範囲が狭く(径約2cm)治療場所に制限があるのが欠点である。
●エタノール注入治療(PEIT)
超音波で肝臓内部を見ながら超音波ガイド下に組織凝固固定作用を持つエタノールを肝臓の腫瘍内に注入して腫瘍を壊死させる治療法です。治療場所を選ばないが、確実性にやや乏しい。
●冠動脈塞栓治療(TAE)
肝臓が門脈と肝動脈とから血流を受け、その割合はおよそ4:1であるのに対して、肝がん(肝細胞癌)はほとんどが肝動脈から栄養されている性質を利用して行う治療法です。血管造影で肝臓内の腫瘍に行く動脈(栄養する血管)にカテーテルを挿入してスポンゼルというゼラチンようの物で血管内の流れを止めて癌を兵糧攻めにして壊死させる治療法です。
●手術療法
切除可能な癌(癌が一個だけで大きさも4cm以下である場合や、癌が複数あって肝臓の一部的に集中していて切除しやすい場合など)は切除可能です。しかし、最も侵襲が大きく、癌の大きさや個数、部位、肝予備能などによっては手術が出来ないことがあります。
●肝動注化学療法
この治療は、肝予備能は保たれているものの、局所治療(PEIT、RFAなど)やTAEによる治療では治療効果が上がらないと判断された門脈腫瘍塞栓を伴った肝がんや肝がんが多発している例などで行います。肝臓の動脈内に留置された特殊なカテーテル(リザーバー留置)を用いて抗癌薬を持続的に注入する治療法です。